1人会社の資金管理と経費最小化の原則

会社の経営って本当に不思議なものです。2つの異なる会社を例に挙げるとすれば、同じ業種で、同じ資本金で、同じ優秀な人間が、それぞれ経営に携わっていながら、一方は業績好調で発展一方は業績低迷で破産するという正反対の結果になることも少なくありません。

会社設立したい人

経営手法の違いで結果に差が出ることもありますね。

独立したい人

タイミングや時の運もあるかもね。

それでも、実際のところ、会社の経営状況の二極化には明確な理由がある場合も多く、その大部分のケースが資金を上手に使えていなかったことに起因しているのです。

会社設立したい人

資金管理ができない経営者は多いと聞きますね。

特に1人会社の場合、会社の最終意思決定者が1人しかいないために、資金管理に歯止めが利かなくなるリスクは極めて高いと言えるでしょう。

しかも、1人会社を設立した経営者の中には、資金を自由に使えるからという目的だけで設立したという方も少なくありません。

独立したい人

悪くないけどちょっと微妙ね。

資金管理に関して、1人会社ではどうしてもバイアスが利きにくいことから、いかに資金を管理を上手に進めていくかがかなり重要となりますが、今回は1人会社の資金管理にかかる基本的な原則を簡単に見ていきましょう。

目次

資金管理の定義

1人会社における資金管理の定義はいたって簡単です。それはまさに、「資金をできる限り使わない」ことに尽きます。

会社設立したい人

簡単なようですごく難しいですね。

商売をするにあたって、資金を多く使わなければ利益を出せないという考え方を持つ経営者は意外に多いものですが、1人会社を経営するにあたっては、これはむしろ余計な考えとなるでしょう。

独立したい人

この考え方は意外な落とし穴かもね。

1人会社を設立した目的を再度思い出してみると、多くの方が、資金管理を自由に進めたい一方で、人件費を使いたくないから、スタッフも雇用せずに経営を開始したのではないでしょうか。

つまり、自身の役員報酬なども基本的に低く設定すべきなのはもちろんのこと、本来必要のない経費に対して、大切な資本金を意味もなく投入するなど絶対に避けなればならなりません。

会社設立したい人

1人だからこそ無駄が出やすいのですね。

また、1人会社の資金管理の定義の中で、もう1つ絶対に忘れてはいけない重要な要素が、金融機関から資金の融資や借り入れを基本的に受けないようにすることです。

人間は、まとまった資金があると無計画に消費したい衝動に駆られることも多く、定期的な固定額返済が前提での資金調達に対する返済不能が度重なると、収支改善が大変難しくなります。

独立したい人

資金を借りる前提で会社経営してはいけないね。

また、自己資金の乏しい状態が常態化してしまうと、借り入れによって調達した資金だということを認識しにくくなるでしょう。そのため、資金を使わない前提での経営は皆さんの想像以上に意義が大きいのです。

その一方で、金融機関からの融資や借り入れのない企業は、債務超過に陥っても経営を継続できる可能性はかなり高くなり、実際にそれを達成している企業は数多く存在しています。特に、1人会社は財政基盤が薄いことから、この部分はとりわけ肝に銘じなければなりません。

クレジットカードの活用と注意点

1人会社の経営に、資金管理の一環としてクレジットカードを活用されている方は少なくないと思いますが、当方も日常的にクレジットカードを資金管理に積極的に使用しているものの、消費ごとに厳格な管理を進めています。

会社設立したい人

クレジットカードは経営に大いに役立ちそうですね。

クレジットカードは法人名義が絶対に必要と言うわけではなく、1人会社であれば社長個人名義のカードを直接活用しても問題ありません。ただし、一旦会社用にしてしまうと、業務に関係のない消費項目での活用はできなくなるので注意が必要です。

独立したい人

公私混同しないようにカードを分けるべきね。

そして、クレジットカードを活用して資金管理をする上での最も重要な視点と言えば、消費のたびに「負債」が発生したと確実に認識することです。

つまり、クレジットカードで資金管理をする最大の目的は、「決済日を延期する」ことのみであるという点を強く理解しなければなりません。

会社設立したい人

お金が湧いてくる訳ではないですからね。

しかし、現状を見てみるとクレジットカードを活用することが、「資金を使わずに消費できること」であるという間違った認識をしている方も少なくなく、経営者であっても意外などほ多くの人がこのような認識に陥ってしまうようです。

独立したい人

倒産した会社ってこういう経営者が原因だったのかも。

そのため、クレジットカードの活用は「回収予定の売上金の事前消費」でなければならず、この認識を忘れてしまうとクレジットによる健全な資金管理が不可能になりやすくなります。

固定収益に潜む危険性

経営も一定期間継続していくと、信用力の向上も相まって、業務によっては固定収益を得られるようになっていきます。

会社設立したい人

会社としては多く持ちたい業務ですね。

そして、そのような業務がいつ発生するかは会社によって異なるものの、固定収益が発生すると多くの経営者にもさまざまな欲が出るようになってくるはずです。

さらに、固定収益は継続性を持つことから、比較的新しい経営者にとって、キャッシュフローだけを見た場合に表面上は経営が順調であるかのように映ります。

独立したい人

これは固定収益あるあるね。

もちろん、すべてが順調であれば理想的ですが、ここで最も重要なのは「順調である」か「順調でない」かを判断することよりも、この固定収益が「いつ突然途絶えてしまうか」という心構えを持つということです。

会社設立したい人

危機管理意識が必要となりますね。

実際、固定収益は新興企業にとって珍しくない落とし穴であり、特に資金調達によって急拡大を仕掛ける企業にとっては大変危険な存在だと言えるでしょう。

このような傾向は、性質が異なるものの、発展著しい開発途上国が方向性を失い、急速に経済失墜してしまう、いわゆる「新興国の罠」にハマるパターンとある意味似ている部分があります。

永遠に経費最小化

どんな大きな企業も赤字にならないというのはかなり難しいもの。それでなくとも、1人会社では万年赤字というところも珍しくはないですが、それでも経営を継続できているのは、金融機関などからの借り入れをせずに、なおかつ経費を最小限に抑えていることが背景にあるからです。

会社設立したい人

日頃からの経費節減の積み重ねが大切ですね。

基本的には、収益が上がってくるその都度、最低どれくらいの経費を使うことができるかをチェックし、同時に一定の内部留保(個人で言えば預金に近い)の確保も考慮しなければなりません。

独立したい人

多くの経費は不要不急のものだしね。

そのためには、ただちに良好な経費バランスをシミュレーションできる仕組みを自分なりに構築することが求められ、Excel表などを活用して資金・経費分析を総合管理し続けることが重要になります。

社員の多い会社であれば、利益が出れば出るほど投資に回したいと思うものですが、1人会社では稼げば稼ぐほど経費を最小化するように進めていくのが永遠のテーマとなるでしょう。

【1人会社の資金管理と経費最小化の原則】のまとめ

資金管理は収益管理と表裏一体です。どんなに一時的に収益を上げることができても、経費をコントロールする仕組みがなければ収益が生みだす効果は著しく減少してしまうのです。

会社設立したい人

どんなに稼いでも支出が減らなければ収益化できないですね。

個人でも収入がそれほど多くないときは、積極的に経費節減をしますが、ちょっとでも収入が上がると無駄に消費し始めることが多くなります。そして、収入が減るとまた経費節減の繰り返すという悪循環に陥るでしょう。

独立したい人

人間の欲って本当に面倒だよね。

しかし、会社の資金管理において、この流れは決してやってはならないことであり、いつ現在の収入が途絶えてしまうか分からない状況を想定しておかなければなりません。

そのためには、経費は常にその必要性を厳しく判断しながら、最小限に抑えていくことが大前提となるのです。

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