コラム~士業の多くの業界人が抱く危機感!鉄板であった良き時代は今は昔に?

日本は資格社会と言われてきた経緯があり、企業側が実務レベルを効率的に見極められるように、国がさまざまな資格の取得を国民に推奨してきた歴史があります。

特に、国家資格はその最たるもの。職業によっては資格がなければ業務そのものができないということもあり、とにかく取得を志す人は少なくありません。

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資格取得もすごく費用がかかります。

しかし、近年はかつて鉄板の代名詞であった士業なども資格保有者の飽和も相まって、決して不景気知らずとは言えない状況になっているのです。

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資格があっても仕事に就けない人も多いね。

今回は、いわゆる鉄板な士業が凋落する現状の背景にある事情や、今後どのような資格が急速に悪影響を受けていくのかという視点でお話していきましょう。

目次

凋落の一途をたどる士業

世の中には、保有しているだけで周りの人から羨望の的となり、絶対に景気に左右されないと思われていた国家資格もあります。

その一方で、社会的需要の著しい変化に晒され、近年は一気に不安定さが増してしまった資格も少なくありません。例えば、次の3つの国家資格はまさしくそれに当たります。

(1)弁護士
(2)税理士
(3)薬剤師

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これらの資格って取得するのも難しいですね。

日本には国家資格として多くの士業、もしくは師業が存在していますが、特にこの3つは比較的収入に恵まれた鉄板資格であると多くの方が認識されていたかもしれません。

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そうではないの?

しかし、実際は多くの資格保有者が収益確保に頭を悩ませている状況で、各業界そのものも社会変化に対応できていないのが実情です。

上の3つは、資格保有者が特に著しい飽和状態にあるとされ、これまでに見られなかった競争激化もあって、理想的なキャリアプランが積みにくい状況となっています。

弁護士・税理士の時代錯誤な現実

まず、国家資格の勝ち組として認識されていた弁護士・税理士。しかし、近年は、社会的現実に翻弄されている印象が否めません。

案件獲得が困難な弁護士業界

弁護士業界は人材飽和が特に凄まじく、近年の弁護士法人による業務抱え込みの強い傾向も相まって、案件獲得の不均衡さが非常に目立つようになってきています。

個人弁護士はよほど実績を積んでいないと継続的な案件獲得がしにくい時代となり、経験の浅い弁護士が独立開業するようなケースであれば大変苦戦を強いられるでしょう。

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弁護士って能力の差が大きいですね。

また、一時期は、特に容易に進められる過払金返金代行業務について、請け負っていた弁護士事務所がかなり多かったのも事実です。

過払金返金代行の場合、結果的に返金される金額が大きくなればなるほど手数料が多く徴収できるという観点から、特定の専門分野の解決能力に乏しい弁護士は積極的に受けていたと言われます。

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弁護士の苦境が分かる。

一部ではあるものの、職業倫理の希薄な弁護士も増えているのも残念な部分で、これもある意味、弁護士の業務獲得をより困難にさせている大きな要因の1つかもしれません。

企業の変化に疎い税理士業界

さて、弁護士と同じように問題が深刻な税理士。彼らが直面している最大の問題は、税理士の業務内容が自分たちにしかできない専門性の高い業務であると頑なに信じ込んでしまっている点かもしれません。

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私たちも将来は税理士なしで経営する予定です。

確かに、大企業税務は金額の大きさやその複雑さもあって、高い専門性が求められることも多いでしょうが、日本企業の大部分を占める中小企業の税務は複雑なものもさほど必要とされないのです。

現在は会計ソフトがあれば、財務管理もスムーズにできる時代となり、綿密な売上管理を進めたいのであれば販売管理ソフトを組み合わせれば何の問題もありません。

もちろん、日常的な仕訳処理がしっかりとできていることが前提ですが、財務管理は長期的に見れば自然とできるようになっていきます。

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会計ソフトはまさに税理士いらず。

また、当方が推奨する1人会社という企業形態も今後急増すると見られる中で、経営者が財務をきちんと自ら進めるという強い流れもできつつあります。

そのため、税理士は、合格確率が極端に低いとされる公認会計士を最終的に目指すなど、より高い目標を設定しなければ活躍が非常に厳しくなるでしょう。

薬剤師の著しい「調剤業務士」化

次に、医療系国家資格の中でも、多くの方に安定していると認識されてきたのが薬剤師です。この薬剤師も時代の需要に対応しきれていなことで、意外に困難な状況へと陥りつつあります。

その大きな要因が、多くの薬剤師が「調剤業務士」化していることであり、このことは個々の薬剤師のスキルアップにも大きな影を落としているのです。

薬剤師は院内勤務で最も能力発揮するもの。患者の健康状態や体力を直接見極めながら、薬剤を的確に選び、投与量を調整する過程で自身の薬剤管理能力レベルをアップします。

しかし、大多数の薬剤師が調剤薬局で勤務する現状は、明らかに薬剤師間の能力レベルの差を広げていると言えるでしょう。

つまり、薬剤師はそのレベルが大きく二極化してきており、優秀な人材は理想的なスキルアップがどんどんできる一方で、調剤薬局のように事務作業に近い業務に長く従事する薬剤師はスキルアップがほとんど進みにくい状況となっています。

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薬剤師も楽観視できないんですね。

薬剤師もそれを認識している方は多いのですが、本来就業したい院内薬剤師は実に狭き門。長く調剤薬局に努めた薬剤師が上手く転職できた場合でも、業務レベルの違いが影響して院内の薬剤師業務に対応できないケースも多いのです。

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同じ薬剤師なのにこれはつらいね。

また、今後、調剤薬局でしか業務出来ない薬剤師は減ることは期待できないことから、薬剤師業界自身が現状の業務以外にも社会変化に伴った新規業務の掘り起こしを進める必要もあります。

近年は調剤薬局チェーンの市場影響力の増大により、調剤薬局は経営困難なところも出てきていますので、今後は個々の薬剤師の転職も大変困難になってくるかもしれません。

その他の意外に困難な資格士業

実は、すでに述べた影響力の落ちている国家資格の他にも、まだまだ危機感を抱くべき国家資格は存在しています。その中の一番有名なものは司法書士かもしれません。

司法書士は、弁護士以外に簡易裁判所での民事訴訟・調停や、訴状作成の代行ができる有名な資格ですが、実際はその業務だけで安定運営をするのが非常に難しいとされます。

司法書士自体はとても取得が難しい国家資格ですが、問題は弁護士の業務獲得が不安定になったことで、司法書士が本来処理できる業務が弁護士に奪われて相対的に減少している点にあるでしょう。

よって、多くの司法書士は行政機関向けの書類作成の代行を積極的に引き受けることで、売り上げを維持しているのです。

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弁護士業務が安定しないことの悪影響ですね。

ただ、当然ながら、行政機関向けの書類作成は、知識があれば誰もが可能であるため、司法書士を必ず通さなければならない業務ではありません。

そのため、案件を多く受けられる司法書士のほとんどは、測量士や土地家屋調査士などの国家資格を同時取得し、1つの包括業務としてすべて抱え込むケースが一般的となります。

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これは賢いやり方ね。

ただ、既存の司法書士業務を進めながら、複数の国家資格を取得するのは時間的にも容易なことではなく、事実上、司法書士としての業務展開は新規参入が難しいと言えるでしょう。

つまり、現段階であっても、司法書士しか国家資格を保有していない方は、業務量を安定させることが非常に困難であることが理解できるのです。

まとめ

日本では、1990年代から、あらゆる分野で規制緩和を行ってきました。これにより、本来参入できなかった業界に新規参入が可能となり、それまで規制によって特定の国家資格保有者だけが進めることができた業務でも、現在はかなり流動的になってしまったものもあるでしょう。

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国家資格ありきの時代ではないのですね。

国家資格のうち、今後もより規制緩和の悪影響を受けやすいのが、やはり国の社会保障費によって人件費が捻出されるような業界や職種です。

独立したい人

効率化がより求められるね。

医師・看護師介護士などは、本日取り上げた国家資格と比べると、まだまだ業務安定性は高く、社会的需要も高い資格ではあるものの、労働環境や待遇問題などは現段階でも数多く存在しており、不安定な要素は今後も大きくなっていきます。

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