
最近、よく耳にするようになった、「黒字倒産」というワード。サラリーマンの感覚からすると、黒字というポジティブなキーワードに、倒産というネガティブなキーワードに違和感を抱かれることも少なくないでしょう。

黒字倒産って確かによく聞きますね。
しかし、この黒字倒産は決して珍しくない倒産パターン。いわば、経営者にとっても、大きな「落とし穴」的な状況とも言え、予測不可能な経営者がかなり多く存在することも特徴の1つです。



黒字なのに倒産?
今回は、黒字倒産について、基本的な傾向を見ていくとともに、黒字倒産に陥らないようにするためにはどうすべきかについてもチェックしていきます。
黒字倒産は中小企業になぜ特に多い?


売上至上主義の企業が多いから
また、黒字倒産を引き起こしやすい、もう1つの要因として、企業文化に根深い売上至上主義が挙げられます。会社たるもの、もちろん売上がなければ存在価値はありません。しかし、それ以上に問題なのは、売上がありさえすれば、とにかく拡大路線で行けるという危険な思い込みです。
実際、多くの会社を取り仕切る経営者は、売上しか見ていないことも多く、重要なキャッシュフローを二の次にしていることも少なくありません。売上が多いことは良いことですが、売上を上げるために、キャッシュが必要なことはなぜか忘れている経営者は非常に多いと言わざるを得ません。



日本の会計は発生主義だからなおさらですね。
たとえ売上が上がっても、実際に会社収入として入金されてくるのは1か月~2か月も先。その間、社員の給料だけでなく、光熱費や様々な経費の支払いは必須で、この間に金融機関から一時的な回転資金を融資してもらうことができれば良いですが、今の時代、融資を受けるというのはそれほど簡単なことではないのでしょう。



資金繰りを疎かにしているのね。
このような状態は、やはり拡大路線の会社に発生しやすいですが、自己資金比率がかなり少ないケースも珍しくないのです。そういう意味では、経験値の少ない経営者が管理する会社ほど、黒字倒産は警戒するべきと言えます。
自由度の高い経営が可能だから
そして、黒字倒産になる確率が高いのは、その多くが中小企業だということ。その背景には、上場していることも多い大企業と比べて、資金調達が総合的に難しい傾向にあるものの、その一方で経営の自由度はかなり高いことでも知られます。



家族経営も多いですしね。
しかし、このことは、時として身の丈に合わない経営状態を招いてしまい、何の経営的バイアスも存在しない中で、経営者が独断で良からぬ方向へと突っ切ってしまうこともあるのです。



これはとても危険ね。
中小企業の資本金割合は、一部の経営陣が大部分を占めていることも多いので、会社によっては本来的方向性よりも、経営者としての利益をとことん優先しがち。これが、ある意味、中小企業にとっての黒字倒産の根本的要因であるとも言えるでしょう。


黒字倒産する会社と経営者に目立つ傾向


効率的人材活用が基本的にできていない
さて、黒字倒産に陥る会社に見られる典型的な傾向として、スタッフの適材適所や有効活用ができていないこともあります。よくあるのが、1人でできる業務量なのに、2人も3人も人材を雇用しているパターン。つまり、人件費を無駄に、ダラダラと消化してしまう流れでしょう。



人件費が一番高いですよ。
どんな業務も、効率化が必ずできるもの。しかし、黒字倒産する企業ほど、様々な方式による業務効率化ができていない状態にあります。例えば、ツールを使って優先度により業務処理することや、場合によっては不必要な業務を削減するなど、効率化でやるべきことは実は沢山あるのです。



後回しにすると改善も不可能になるね。
当方のサイトで奨励している1人会社も、いわば効率的な人材活用の究極的な姿。黒字倒産する会社は、この概念を全く理解しないままに経営をし続けています。
経費や不動産・車両の購入が無駄に多い
また、黒字倒産する会社は、キャッシュフローが良くない傾向があることはすでに触れましたが、その要因の1つに経費に多さと、不動産や車両などの固定資産の購入が多いこともあるでしょう。
特に、年度末における、法人税を低く抑えたいというだけの固定資産購入はかなり多く例があり、一部の経営者が恣意的に行っているケースさえ見受けられます。



人間の欲って怖いですね。
しかし、このような会社は、いざと言うときに資金が不足する傾向にあり、黒字倒産を突然引き起こす可能性が極めて高くなるでしょう。経営方針と言うよりも、経営者の独善的な判断から来る消費傾向でもあることから、改善が非常に難しくなり、悪影響も出やすいのです。



経営者が悪いと会社も社員も不幸ね。
一定の法人税を毎年納付しても、経費を抑えるという健全な方針をしっかりと持っている会社は、結果的に資金が徐々にプールされるようになり、黒字倒産が発生しにくくなるでしょう。
そもそも経営者が自分から実務をやらない
そして、黒字倒産する会社は、経営者がすべてのことを人任せにする傾向にあります。実務を自ら発揮する経営者は問題ありませんが、そうでない経営者は会社の実情を理解していないことも多く、財務状況を楽観視してしまいがちです。



生涯現役という経営者がいいですね。
また、業務を人に丸投げしてしまう経営者も多いので、無駄な人材を抱えてしまうこともよくあり、このことも黒字倒産に発展する大きなリスクになるでしょう。



雇われ社長とかに多い感じね。
そのため、経営者の基本スタンスとして、できるだけ多くの実務を自身が率先してこなすことが結果的にコストカットにもつながり、良好な財務状況を維持することにも大いに役立つわけです。そのため、現在この部分ができていない場合はいますぐにでも改善すべきと言えます。
黒字倒産しないための基本事項の再確認


信用取引を絶対にしない
ここからは、黒字倒産にならないようにするための基本事項の再確認。それが信用に頼った取引をしないということ。特に、口約束などによる、手形を使った取引は今の時代は絶対に禁物です。



生涯現役という経営者がいいですね。
昔ながらの信用取引は、現在はお互いのためにならず、積極的に取引先にも啓発すべきでしょう。それができないようであれば、取引先としては相応しくないと言えます。
借入や融資を受けない
また、黒字倒産する会社の多くが、借入や融資に業務が左右される傾向にあること。会社を経営している以上、いつ資金源が途切れてしまうということも考えられます。突然融資が受けられなくなるということも、全然珍しいことではないのです。



雇われ社長とかに多い感じね。
そのため、日常的な業務展開を、自己資金のみで行うことは非常に重要なこと。そして、自己資金の範囲内で経費支出を行うということが、黒字倒産を招かないためのベストな方向性となるでしょう。
経費を徹底的に減らす
そして、会社の収益は、資金を使ってこそ得られると勘違いしている経営者もいます。しかし、良好な財務状況を持っているところは、いかに経費を使わずに利益を出すかというスタンスを常に心がけています。



よく考えれば分かることですね。
そのため、今一度、毎回経費を検討する上で、「本当に必要なのか」という視点を強く持つべきです。これを徹底することで、黒字倒産しない経営体質に自ずと変わっていくのです。
まとめ
黒字倒産は、財務上黒字ではあるものの、実際は手持ちの資金がないことで身動きが取れないという、不本意な状態から引き起こされます。



個人でも同じことが言えます。
「取らぬ狸の皮算用」という言葉がありますが、換金できていない売掛金を当てにしている状態であると考えれば、ある意味、この言葉に近い境遇にあるのかもしれません。



上手いこと言いますね。
また、中小企業の場合、財務部門が経営者に黒字倒産の可能性を積極的に提示できる仕組みがないことも多く、このことも中小企業が黒字倒産に不利な一面でもあるでしょう。
しかし、これも経営者がきちんと意識していれば、十分に回避することができる事情。だからこそ経営者は、その会社でオールマイティな存在であることが最も望ましいのです。