
中国人はメンツの民族と言われ、特に男性はそれをとにかく守ることが良しとされる。それは、男性にとっても中国社会の中で自身の格を上げることにもつながってきたし、決して悪いことではなかった。
それでも、今ほど、中国人男性がメンツを恨めしく感じる時代はないだろう。中国では、男性が社会地位的に優遇されてきた歴史はあるものの、今ではメンツを気負わない代わりに、そういった古い概念をむしろの望まない中国人男性も多いのだ。
しかし、中国語で「終身大事」と呼ばれる結婚に関することとなると、そうは簡単にはいかない。すべてのことで、自分とパートナーだけでなく、お互いの親や親戚を巻き込まなければならないのだから。
中国人男性余り厳しい実態

かつて、中国は、かつて人口ボーナスが非常に大きく、実際に中国人自身もそのことを誇りに感じていたほどだ。しかし70年代末から長らく続いた、いわゆる「1人っ子政策」と、中国社会特有の男児優先出産の風潮も相まって、男女人口バランスに著しい歪みを生じさせてしまった。
その結果、中国人の結婚事情にも早い段階から大きな悪影響をおよぼしていたとされるが、中国人がその重大性に気づき始めたのはごく最近の話。それというのも、男余りの状況は、多くの地区でそれほど深刻なものとは認識されていなかったからだ。
抜本改善が極めて困難な状態
中国の異常な男余りは、基本的に改善が極めて困難であるとされ、日本とは比較にならないほど深刻化が予測される未曽有の高齢化や、さらに人口そのものが減少し始めたことも重なって、より状況が悪化していくのは必至の状況だ。
2020年の人口調査で、中国では、男性が女性よりも、3,000万人以上多いということで話題になったが、中国の統計常識から言えば実際はさらに多いとされている。
このうち、いわゆる20から40歳までの結婚適齢期の人口は、男性が女性よりも、少なくとも2,000万人弱は多いとされ、出生率の低下とはもちろん、労働人口も毎年確実に減っている現状を勘案すればその差が改善するとは非常に考えにくい。
独立・非婚志向の中国人女性も急増
中国人男性にとって、もう1つ不利な状況が中国人女性のこれまでにないほどの独立・非婚志向だ。
もっとも、独立志向に関して言えば、今まで中国人女性に全くなかったというわけではなく、現実にビジネスで成功を収めている者は現在でも多くいるし、その考えを持つこと自体は今も昔も変わってはいない。
しかし、大きく変わったのは、中国人女性が結婚しないという選択肢を持ち始め、そしてそれを選ぶことにも躊躇しなくなったことだ。この部分は、これまでの中国にはあまり見られなかった傾向であり、この中国人女性の心の変化は、中国社会においても非常に大きな出来事に違いない。
というのも、それまでの中国人女性は自分よりスペックの高い男性との結婚を絶対的な命題として認識していたからだ。
このように、中国国内の目まぐるしい社会変化の中で、中国人における非婚志向の女性の急増により、男性余りの傾向はより急速化している状況だ。
東南アジアを目指す中国人男性たち

さて、中国国内の男余りの厳しい現状に対して、当の中国人男性も、黙って指をくわえて見ているわけにはいかない。
実際、一定の年齢になっても親に会わせられるパートナーを見つけられていない中国人男性の多くは、中国国内で自分たちが置かれた状況に対し、何とか打開策を見つけようと日々苦悩している。
特に、最近中国人男性に多くなっているのが、東南アジアへの嫁探し。旅に乗り出す男性の年齢も実に幅広く、一定の資金だけを握りしめて身軽に出かけるケースもあるほどだ。そして、中国人男性にとって、ある東南アジアの国が最も熱い。
ラオスに見えた希望の光?
嫁探しに燃える中国人男性に、いま最も注目を浴びているのが、東南アジアのラオスだ。ラオスは近年、中国との関係が密接で、中国が提唱してきた「一路一帯」の一環で中国版新幹線を真っ先に乗り入れている国だ。
それだけではない。一定の条件を満たせば、中国で所有しているマイカーを運転してラオスに入国できるシステムが存在し、このことが中国人男性のラオスへの嫁探し旅に拍車をかけているとされる。
ラオス人女性は、中国人好みの素朴な美人が非常に多いとされ、中国国内で中国人男女が結婚する際に必要とされる「結納金」も極めて安く、特に中国人女性やその家族が結婚時に求めるマンションやマイカーの購入などもラオス人女性との結婚では求められない。
このような背景もあり、今、ラオスは中国人男性にとって、一筋の「希望の光」が見える場所となっているのだ。現在、某有名動画サイトなどでは、ラオスに嫁探しにいく旅の過程をVlogとして生々しく公開する者も目立つ。
嫁探し旅行が今や日常化
ラオスへの嫁探しVlogを視聴していると、パートナー探しがスムーズに行っている者、または上手くいかずに焦りを隠せない者など様々だ。
しかし、彼らの発言内容からよく分かるのは、すでに相当数の中国人男性がラオスに乗り込んでいること。自らも嫁探しに来た、とある中国人男性Vlogerが言うには、2023年時点で人口700万人程度のラオスで、その中の比較的若い女性を求めて多くの中国人男性が競って合っている感じであるという。
このVlogerは、1人のラオス人女性が異なる多くの中国人男性に1度でもアタックされる確率が極めて高いということを認識した上で、自分がこのような状況の中にいることに困惑を隠せなかったようだ。
中国人男性が嘆くのも無理はない。具体的に言えば、10代後半での早婚も珍しくないラオスにおいて、結婚対象となる15歳から29歳までの、いわゆる適齢期に当たるラオス人女性の人口は100万人程度しかいない。
中国人はこの状況をどう見ている?

将来のパートナーを切望する中国人男性の姿に、中国人からも様々な声が上がっている。もちろん、同じ男性からは応援する声も数多くあるが、わざわざ嫁探しのために海外に出かけていく姿に批判の声も少なくない。
また、嫁探しの動画コンテンツで見受けられるような、ラオス人女性に対する中国人男性の、いかにもナンパ然とした言動や落ち着かない振る舞いにも不快感を示す中国人も実際におり、中には「海外に行って、わざわざ中国人の恥をさらすな」という厳しいコメントもあった。
さらに、上述のラオスを訪問しているVlogerの話だが、ラオス現地で多くの中国人男性を多く見かけた以外に、湖南省出身の中国人女性にも出会ったのだが、その際に少々バツの悪い思いをしたという。
その中国人女性が言うには、このVloger自身に対して、嫁探しのためにラオスに来たということを指摘しただけでなく、「結婚したい女性ばかりだとは思わないでほしい」と発言してきたというのだ。この中国人男性Vlogerは、もともとこの中国人女性とも交流するつもりでいたが、思わぬ指摘をされたことで気が滅入ってしまった様子。
まとめ
ラオスでの嫁探しや、パートナー探しで成功している中国人男性のパターンを見てみると、やはりいくつかの共通点がある。その中で重要なものは、ラオス語を一定程度話せることと、ラオスで商売や仕事をしていることだ。
東南アジアの最貧国とも呼ばれるラオスだが、敬虔な仏教国でもある。それでいて、格式高い女系家族社会であることから、多くの家庭では娘の婿となる男性がラオスに住み着くことを望む傾向にある。もちろん、海外に住むことを望むラオス人女性もいるが、全体的に言えば決して多くはない。
また、驚いたのは、上記のとは別のVlogerの動画で、中国から母親と一緒に東南アジアに嫁探しに来ているというパターンもあったこと。中国人男性にとって、嫁探しはそれほど大きなけじめをつけなければならないイベントであるようだ。中国人男性の嫁探しの旅は、まだまだこれからも続いていく。